春との旅

2010年、ys-hearty-blog邦画のベスト・オブ・ザ・イヤー候補です。

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☆★☆★☆春との旅
公式サイト → 映画『春との旅』公式サイト
原作・脚本・監督:小林政広/音楽:佐久間順平/上映時間134分

【出演】仲代達矢(中井忠男)/徳永えり(中井春)/大滝秀治(金本重男)/菅井きん(金本恵子)/小林薫(木下)/田中裕子(清水愛子)/淡島千景(市山茂子)/柄本明(中井道男)/美保純(中井明子)/戸田菜穂(津田伸子)/香川照之(津田真一)、ほか。※カッコ内が役名。

【あらすじ】足が不自由とはいえ、老人というのがはばかられるほどの立派な体躯、そして旺盛な食欲を見せる老漁師の忠男(仲代)。対して、うら若き乙女の年頃にも関わらず(おそらくは)人並みの恋愛もせず、忠男との暮らしのためだけに懸命に働いてきた春(徳永)。父と離婚した母が亡くなって以来、静かに寄り添って生きるしかなかった2人だが、春が失職したことで事態は急変する。都会に出て新たな職を見つけたい春にとって、祖父が重荷になる日がとうとうやってきたのだ。忠男の引き取り先を見つけるため、疎遠になっていた忠男の兄弟たちを訪ねることにする2人。“2人が別れるための旅”は、忠男のこれまでの人生のツケ、肉親たちとの傷や悲しい絆を炙り出してゆく…。(エンタメ通信シネプレッソ5月号から)☆★☆★☆

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☆★新宿バルト9にて公開初日、上映後舞台挨拶※記憶とメモから起こしたので大まかですが、レポートしておきます。


登壇者:(ステージを見て左から)小林政広監督、淡島千景、仲代達矢徳永えり、柄本明、美保純
※仲代さんは黒の上下、ベージュのジャケット、荘厳な雰囲気で最初に登壇。徳永さん、黒系の上にやはりベージュ系の衣装。淡島さんは紫系のお洒落な衣装、柄本さん薄紫の地にデザインの入ったセーター、美保さんは、黒系で可愛らしく帽子。(相変わらず描写ニガテですみません)

小林監督「今日は本当にたくさんのみなさんに映画を観に来ていただき、ありがとうございます、うれしいです。なんか掃除のオバサンしかいなかったらどうしようと思っていましたが(笑)、これだけたくさん来ていただいたのは初めてのことです」
仲代達矢「この映画で、自分勝手なわがままなジイサンを演じた、仲代達矢です(笑)1年前の今頃から、少しでも多くの皆さんに観ていただきたいので、宣伝キャンペーンを(してきて)初めて観たお客さんを前に(してきました)。今までは観る前の人にあいさつをしてまいりましたが、今日は初めて、観た後の人に、ということで、(いろいろな話ができます)」
徳永えり「本日はこうしてたくさんの方に来ていただいてうれしく思います。いろんな各地方をまわって(映画を撮影していた)、やっとみなさんに届けられる日が来たなと、うれしく思っています。(みなさんに伝わるものがあり、周りの人に伝えていただけたら)こんなにうれしいことはありません」
淡島千景「ご紹介いただきました、淡島千景でございます。何年かぶりで小林先生と、そしてやっと出させていただきました。(そうなるのが)何時だろういつだろうと(待っていましたが)今日がロードショーの初めの日ということで、待ち遠しかったです。これからは、みなさんに観ていただいて、厳しい批評をいただくこともあるでしょうし、怒られるかも知れませんが、一人だけの女の兄弟を演じました。(そういう力を込めて制作した映画を)どうぞ皆様方にも酌んでいただいて、よろしくお願いいたします」

柄本明「映画の初日でたくさん、お客さんに来ていただいて。(後ろのスクリーンのほうを向いて)ここに映画が映されて、テレビとは違う映画の感動があると思いますが、第一、僕は観てないんです(笑)。このあと午後、はわかりませんが、また次に観に行きたいと思います。ご覧になられた方はわかるように、大変に、仲代さんに殴られました、いっぱい(笑)。弟役で、尊敬する大先輩に殴られるのは光栄です」
仲代「(あなたは)随分、ヒドイこと言いましたよ、腹が立ちました(笑)」
柄本「淡島さんは、雲の上の大女優さんですし、いや、美保さんも徳永さんもですが。映画というのは実に素晴らしい。今日はたくさん来ていただきましたが、明日からどういうふうになるかわかりませんが(笑)ぜひご近所やご家族の方々に宣伝していただければと思います」
美保純「たぶん映画で映ってるよりダイエットしたので、(映画では)むくんでる感じが奥さんらしさが出ていたかなと。私は今年50歳になりますが、(同世代以上の女優さんには)まだ、ひよっこと言われてます。また、こういう、いそうなオバチャンの役をがんがん演っていくのをめざして頑張っていきたいと思います。今回の映画の後、親戚や従兄弟とも楽しく話ができたので、いい映画だなと思います。胸を打たれたところもあったと。ブログとかで書いて宣伝してください

――100本くらい脚本を改訂したと。思い出されることは。
監督「苦労したのは(みんなもそうやって生み出していくのだから)自慢にはならないです。暗闇の中彷徨ってる感じで、幸せな瞬間ってのは感じないですけど。お客さんの前に出せて、作ってよかったと思います。一人でも多くの方の心に残るようにという想いで作っています」

――コワい顔されてますが。頑固な役柄について。
仲代「私も頑固ですよ。ただ、こんなに人に迷惑かけて自分の夢を追って頑固にはならないなと。我慢してるんですね。ただ、この映画では、これはもう、思い切ってわがままにやれるな、と。この映画はシナリオに8年かけて、後の2年は私のスケジュールでお待たせして10年かかった。監督さん、どんな役でもいいですが、これから10年は生きてませんので(笑)、(次回作までは)10年かけないでいただきたいと思います」

――忠男の役のモデルは。
仲代「私の母親に似てる。自分のやりたいことやって、88歳でなくなった。血かな、と。温泉に連れて行って、向こうの人が(仲代達矢さんのお母さんだとは)嘘でしょと言ったら怒って帰っていったような人」
監督「たぶん、ウチのオヤジもわがままで博打もしたので、そこらへんがモデルに近いかなと」
仲代「ウチのおふくろはですね、戦争で飢餓状態だった時代にも、家で近所のオバサンを集めて(博打を)やってた(笑)この映画が一種の供養だと思っています」

――ラストシーンは、何通りか作られたとか。
監督「いちばん最後をどうしようかと考えたんですが。蕎麦屋のシーンで、(忠男と春の)二人が通い合ったんで、その後は、春のためにも、わがままなお父さんは死んでもらったほうが…(笑)それで、あの終わり方で」
仲代「まさに賛成。忠男にとっては、一種の救いで。ファンレターで、どうして死んじゃうのかという意見がありましたが、あのままハッピーエンドで旅をして来たのでは、彼には救いにならないんだと」
監督「生かす方向でとの意見もあって、一応2パターン撮っておいたんですが、僕の中には、死んでもらったほうがいいとの想いがあって」
仲代「殺してくれてありがとう(笑)」
監督「台本渡した段階で、死ぬことがわかっているのはどうかと思ったので」

――撮影中のことで印象に残ったことは。
徳永「そうですね、いちばん印象に残ってるのは、孤独だったことです(笑)。それが当たり前だと今回感じましたが。きっと私は追い込まれなければ春は出てこなかったと思うし、それがとても意味があることなんだなと。台本をいただいてからどうしようと思いましたが、現場ではそういうことを感じる余裕もなくて、ドーンとぶつかっていった感じです。(ガニマタ歩きは)完全に直りました

淡島「人間は生きていかないといけない、生きることは難しいですが寿命をもらった以上は(それが来るまで)死ねない。ウチも兄弟が多いんですが、大きくなっても姉さんとして弟を見る。ともかく生きる(方法を)見つけてほしいと突っぱねる。それが人間であり家族の本当の姿であると思いました」

――役作りに当たって、ディスカッションはあったか。
柄本「何も話してません。ただ、なんかバーッと喋って」
仲代「リハーサルは、やりましたかね」
柄本「やらないことはなかったですけど、わりとスグ」
仲代「長いカットだなと思ったんですが(笑)」
監督「(何度か仕事しているので)柄本さんはどう来るかは読んでますから」
柄本「(舞台挨拶は初めてということで)光栄です」

美保「道で(柄本演じる道男と夫婦して)戻ってく時、『何か食べる?』っていうアドリブが使われてたのが、びっくりしますね。フワッって落ち着く、内助の功っていうか…私にはないんですが(笑)」
監督「あのシーン、前の日に思いついて。道男と明子が去っていくシーンですね。だから柄本さんに電話して、一日早く入ってもう1シーン追加。これは使えると」
美保「(忠男さんのイメージは)後ろから抱きしめたいような。(仲代さんは)今日は、ロン毛でセクシーな(笑)

フォトセッション。仲代さんも積極的にカメラやムービーに手を振るなどしていました。
14時半ごろ開始、15時04分ごろ終了。


※感想を少し。会場内の客層は、高めだったように思います。全体にキャリアの長い方々の登壇で、仲代さんや柄本さんの現れる様子は、役者の人々の世界独特の空気を感じました。柄本さんや美保さんが、溌剌としてました(笑)…柄本さんに溌剌って言葉を重ねると、シュールですが(笑)。

仲代さんは、感慨の湧き上がる想いだったのでしょうか、ゆっくりと歩くし、視線の先をじっと見てたりします。

僕のいる方向にも一時、じっと視線を向けてくださって… コワいですって!(^^;)(笑)

今回、ys-hearty-blog、「仲代達矢」テーマ記事とするので、それで勘弁してください(笑)。
徳永さんは、緊張の面持ちでした。☆★

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いわゆる、“ロードムービー”。北海道、宮城県など、日本の北の地域が舞台、ロケ地です。
春と忠男は、北海道の増毛から、気仙沼→鳴子温泉→仙台→苫小牧→日高、そして、増毛へと帰っていきます。

唐突な旅行を好きなysheartですが、映画でもこういう作品は惹かれます。
何より、5月22日に舞台挨拶とともに観ようと決めた大きな理由は、日高の牧場から春と忠男が急ぎ足で去っていく風景(最初の写真)を見て、何故か、急に涙が出てしまったからです。これは行かねば!と思いました。

カメラワークがいろいろです。海は、冒頭と、フェリーで苫小牧へ行くときの2回。水平に撮られている。
キャストを長く寄りで撮って、話している時、聞き手にカメラが変わるのが少し後になる。また、その時、一人が長い台詞を話し続ける。
その一方で、春が仙台で、泊まれるホテルを探すシーンでは、カメラが少し揺れていたりします。

ストーリーについて。家族と親戚との間に往々にしてあるやり取りを通して、忠男の生きる道探しの旅が描かれます。
一方、春のほうは、茂子の店で働くかどうかの決断の場面や、道男の家で兄弟の反応がみんな一緒だということに吹き出す場面、真一との再会で両親の別れへの想いを吐き出す場面…が旅の意味を示唆しているようです。

春は自分だけで生きる道を選ばないのが観ている方に行く末を案じさせなくもないのですが、それも、家族が散り散りになったことへの寂しさが背景にあることを想像させられる気がします。
最後は、蕎麦屋で、やはり忠男と生きていくと話すのですが、これは、春の成長を示す言葉なのかどうか分からないのが、面白いところです。
というか、春はもともと東京へ出ようと考えるくらいですから、決して家族に甘えているわけでも未熟なわけでもない。
タイトルが、“忠男と春の旅”とかでなくて、“春との”旅、となっているのは、忠男の目線で、春が羽ばたくための足場固めに、忠男が動き回る物語だったと言えるかも知れません。
足場固めとは、家族の問題、絆を確かめるということ。春が東京へ出るにしても、どんな新しい生き方を選ぶにせよ、それらの問題、特に父親へのわだかまりを洗い流しておく必要があったのです。

では、日高町を駆けて去っていく後姿の春は、何なのか。それまで5年間、母のない家で、小学校に勤めながら暮らした日々の、すがるものがあるようで足りなかった春の心に生まれた、明るい兆しを映し出しているのでは。

僕アー、こういう、北海道の増毛行きの電車に乗る直前の春も、悪くはないなーと思うほうです(笑)

だから、忠男が増毛に帰る電車の中であのようになるのは、ダイレクトすぎる感じが少しあります。
たしかに春は、忠男との生活の続行を選んだけれど、そう遠くない時に、結局は死に別れるのですから。

仲代さんが今日おっしゃったように、自分が救われるために、忠男自身のために、その時点で死んだ、そこに監督の意識のいちばん核となるところがあったのかなと思いますが…。

春ののどかな姿、身近であるはずの家族との絆が危うい世の中で、温かい人のつながりを体現する春が美しい。

少し笑えたシーンは、仙台のホテル探しで、「学会があるので」満室と聞いて、春「学会だって」忠男「ガッカイって何だ」春「おじいちゃんに分からないのにアタシに分かるわけない」というやり取りが(笑)。僕も、冬季国体の観戦などで地方へ行く時、会場周辺のホテルが取れないことを思い出したりしました。※10年5月24日追記

あと、細かな点ですが。春のお風呂のシーンがあります。そこでの鼻歌は、「時には母のない子のように」(カルメン・マキ)です。時代を感じさせますね。今日の朝日新聞土曜版によれば、撮影中孤独だった徳永さんは、音楽好きで、「手紙」(アンジェラ・アキ)を聴いていたとあります。
…徳永さんのお風呂のシーンです(←わかったわかったw)

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【5月22日付朝日新聞be on Saturdayから】

徳永えりさんを自覚的に観るのは、このブログで以前、書いた映画『フラガール』(2006年)以来です。あの映画では、主人公をフラダンスに誘いながら自分は父親の解雇の事情で諦めざるを得なかった悲しい役柄を演じました。

今度はホントに、大先輩ばかりで同世代皆無でしたね^^;

でも、いろいろと正統派の勉強ができたのではないでしょうか。好きなダンスをまた始められて、これからも良い表現作品に恵まれることを祈ります。『アキレスと亀』(2008年)もDVDで観ましたが、これはこれで現代的な役どころで良かったです。舞台『ワルシャワの鼻』(2009年)も観なかったのが少し残念。※『ワルシャワ…』大阪公演は、6月2日~6日、シアターBRAVA!にて。(10年5月28日追記)

しかし、今回の映画は、徳永さんのよき代表作になるでしょう。
今日からysheartは、徳永を応援するトクナガーになりますので(←みなさんあまり気にしないようにw)。

そんなわけで、美保純さんのおっしゃるようにブログで書いたので、大ヒットは大丈夫だと思われます(笑)。

p.s. 次回ys-hearty-blog予告。
80年代後半に、今日の仲代さんのようにロン毛でセクシーだった、洋楽アーティストの登場です。お楽しみに。

この記事へのコメント

Any
2010年08月25日 14:47
ysheartさ~ん、こんにちは♪
その節は、励ましのお言葉ありがとうございました!
癒すとか忘れるではなく、色々な思いと共に
これからも歩みを進めていきたいと思っていますので
今後ともヨロシク!(。-_-)ノ☆・゜::゜です。
そして、そろそろTOPページから広告を消さねばなりませんね(笑
復活コメ☆どちらにお邪魔しようかと悩みましたが、
不意打ちで、まずはこちらに。

さて「春との旅」ですが、舞台挨拶の様子を書いて下さったおかげで
幾つかの疑問がとけてスッキリしました、感謝。
春のガニマタ歩きは演技だったのですね?(←ソコかい!)
前半、「何故に孫の幸せを考えてやれんのじゃ?!」って
忠男爺には腹を立てながら観ていたのですが、
淡島姉さんがズバッと言ってくれたのでクールダウンできました。
旅を通して下した春の決断は、決して諦めではなく
前向きな心の変化という風に私は受け止めましたが、どうでしょう。
あぁぁ~それなのに・・・あのラストで忠男自身は救われたとしても
あんな遺され方をした春の気持ちを考えると・・ツライなぁ。
そうそう!最初の画のシーン、あの後姿には私も涙が出そうになります。
牧場でのシーンも印象的でした。(お父さんのお嫁さん、イイ人だー)
複雑な思いはアレコレ過りましたが、観て良かったです^^
ではまた!(笑
2010年08月25日 20:48
Anyさん、またこうしてお話しできてうれしく思います!

>癒すとか忘れるではなく

そうですね~、事があっても、これからの自分の生きる力にして、また新しい体験から来る想いとともに歩んでいきたいですね。

もともとこの映画からではないかとも思ったのですが、少し日が経ったのでどうかな~と、思いかけてました。ありがとうございます!

徳永さんは、この映画のためにガニマタ歩きにしたみたいですね。大事なトコだと思います(笑)舞台挨拶の後で、新聞などを読んでわかりました。あの歩きで、忠男とともに走っていく姿が、僕にはぐっと来て、今回はこの映画で、と思いました。

僕は、春の姿勢には初めから終わりまで、わりと好感を持って観ていました。旅の後の決断も諦めではなくて、心に引っかかっていたものが取れて希望と安らぎを得た変化のあらわれだったと思いますよ。

ラストはいろいろと複雑な想いがよぎったけれど、間違いないのは、旅を通して忠男は救われて、春は前進した、ということ…。家族とともに生きる人々の温かい成長の風景が見られて、8月の現時点でも今年観た日本映画では、いちばん好きです。僕も、観て良かったです!

次はどんな不意打ちだろうかー!(笑)それでは。

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